予防と健康管理レポート

 

1,はじめに

 今回、予防と健康の授業で現代のうつ病についてのビデオをみて、文献より精神的ストレスについて調べることとなった。最近うつ病にかかっていたり、自分で気づいていないが、うつの気がある人がかなり増えていると思う。今までは、日常のストレスとうつとの関連しか考えたことが無かった。しかし、文献を調べると、社会的ストレスと精神疾患の関係を調査しているものがあり、興味をもったのでその文献を選んだ。

 

2,選んだキーワード

 mental health & stressor

 

3,選んだ論文の内容

 選んだ論文は‘Effects on Alcohol Use and Anxiety of the September 11,2001,Attacks and Chronic Work Stressors;A Longitudinal Cohort Study’(9.11アメリカテロと慢性的な仕事のストレスがアルコール使用量と不安に影響するかどうかの調査)というものである。

 作者は、日々の仕事からくる慢性ストレスをもっていると、心的外傷を与える大規模な社会的ストレス因子、ここでは2001/9/11に起こったアメリカテロによって何らかの影響を受けると仮説をたてている。

 今までに、9.11がニューヨークの人やその周りの居住者に、うつ、不安、外傷後のストレス、アルコール消費量増加などといった精神健康に影響を与えたと明らかにされている。さらに、女性、低教育の人、離婚している人にもマイナス面の影響があると証明されている。しかし、それらの調査のほとんどが断片的なもので、9.11の経験と精神健康の因果関係は不確かなものであった。しかも、9.11の経験と日々継続しているストレス因子との関連についての研究はなされていなかった。

 この調査を行うため、精神的ストレスの精神健康状態への影響を、詳細に描写したストレス模範を引用した。特に、心的外傷を与える大規模な社会的な社会的ストレス因子と、日々の仕事場での慢性ストレス経験やコントロール能の低下とのつながりを重要視している。9.11という大惨事は、セクシャルハラスメントや仕事場乱用といった仕事場での対人関係の被害が生み出すやる気喪失とは異なった、やる気の喪失や犠牲者だという気持ちを啓示させるとみられている。また、ストレスの調査によると、激しい事件は慢性または急性ストレスに影響を与え、精神健康に有害であると述べられている。よって、上記の仮説に至った。

 調査の方法として郵送調査を使用した。これは、意思決定の自由、セクシャルハラスメント、仕事場の乱用、心理的苦悩、およびアルコール使用について評価するため、事件前と事件後の比較をアンケートし返送してもらうという方法である。さらに、精神健康の基準を決定したあとで、9.11が与えた最大の影響と、9.11とストレス因子の相互作用について回帰分析を行っている。

 郵送調査は性別、人種、職業でいくつかのグループに分け、事件直後、一年後、五年後の計三回行っている。返答の総数は予想より少なかった。これは被験者の自己管理の表れと事件への敏感さと追跡調査を恐れていたからだろう。

 結果としてわかった事は、アルコール使用の増加や不安感にたいして、9.11が主に影響を与えたのは男性ではなく、女性に対してで、その中でも仕事をしていてストレスをかかえている女性がかなり影響をうけている。

 社会統計、ストレス因子、精神健康状態といった項目で、男女の対比を行った。人種において白人は男性の方が多かったが、アフリカンアメリカンは女性の方が多かった。また、男性の方が高い学歴を獲得している人が多く、平均年齢年齢が高かった。ストレス因子においてはあまり違いがみられなかった。精神健康状態では、男女の違いが顕著に現れた。うつや不安感の高まりが女性で多く見られた。また女性に限って、9.11の影響によってアルコール消費量が増えている。全体的に見て、男性ではそこまで大きな関連性がみられなかった。一方、女性では、意思決定の自由と9.11の経験は連結しており、現実逃避や不安感を取り除くためアルコール消費量が増えたと思われる。さらに、セクシャルハラスメントや職場乱用の経験がある事も、9,11の経験と関係してきて、アルコール消費量の増加が見られた。意思決定の自由が無く、セクシャルハラスメントや職場乱用があるといった仕事環境でのコントロール能の欠如と、9.11の経験は深く結びつき、高い確率でアルコール依存になる。しかし、意思決定の自由がある場合は、そこまでの確率ではない。意思決定の自由がある場合、ない場合に比べて、不安感の高まりは低く、現実逃避のためのアルコール消費量も高くなかった。セクシャルハラスメントのみや、職場乱用のみの時も、そこまでアルコール依存にはなっていない。

 つまり、結論として、9.11の影響は、様々な局面からコントロール能の欠如が引き起こされて慢性的なストレスとなり仕事の任務を行えない場合に、アルコール依存や精神的苦痛の増加として、顕著に現われている。

 

4, 選んだ論文の内容と、ビデオの内容から自分自身で考えたことを、将来医師になる目で捉えた考察

 9.11という大惨事が与える影響は、日常のストレス因子があるかどうかで代わってくるという事を知って驚いた。トラウマとは心的外傷の事であり、事故や災害、犯罪などにおける死につながるような驚異的で破局的な体験を指す。自分の周囲に起こった事が原因で精神疾患が発症する事はまれであり、嫌な記憶イコールトラウマではない。しかし、トラウマの概念はいつの間にか拡大解釈され、嫌な出来事が全てトラウマであると誤解されている。それは今、心の病に注目が集まり、精神的な空虚さが目立っているからだろう。現代の職場環境は、コミュニケーションをとらなくてもいいように変化してきてしまった。仕事のスピードだけが求められ、人手不足のため残業がふえ仕事に追われ、精神的な余裕がなくなっている。実際、コミュニケーションが減るとうつ病が増加したという結果が出ている。こうして慢性的ストレスを抱えた人は増加する一方だ。嫌な出来事イコールトラウマではないとしても、トラウマになり得る事件が起こった場合、その出来事が人に与える影響は大きくなるため、つながりは深いものである。

 精神病にかかってしまうと治療はとても困難である。病気前の状態に戻る人は限られており、医者でさえもおてあげな症例も数多くある。精神的な病程、原因が個人に与える影響が多様な疾患は無いと思うので、患者一人一人に対する治療が必要だろうが、治療に時間がかかるし、患者が増加しているため、一人の患者に与えられる時間は限られている。さらに、手に負えない患者を違う病院に送るという現状がある。治療困難な状態になる前にストレスの解消法などをもっと世間に広めるべきだ。ストレスがたまっている事に気づいていない人も結構いると思うので、カウンセラーの利用を増やすなど、病院にかかる前の段階の対処が必要である。医療従事者は社会とのつながりを深めて、病院にいる間だけケアを行うのではなく、社会復帰した後のケアも行わなければいけない。

 また、性別の違いが9.11の影響に関わる事に驚いた。女性が社会に出ると、自分の社会的立場の心配と、家族や友達など周りの人への心配によって板挟みになりやすい。女性が弱い立場に立たされる事は少なくなったとしても、まだ男性と平等ではないし、育児など家庭の影響を受けるのはやはり女性の方である。仕事と育児の両立が可能な状況が整っているとは言いがたく、社会的にも育児休暇を受け入れる意識は低いと思う。そういった環境の悪さが、女性の慢性的ストレスにつながるのだろう。

 

5,まとめ

 今回のレポートではアメリカテロといった社会的なストレス因子の影響について調べたが、社会的ストレス因子が日本での出来事なら結果はかわってきたかもしれない。多分、日本ではそのストレス因子によって影響を受ける人数は増え、症状ももっと深刻だろう。うつ病治療後の社会の対応がアメリカと日本では大きく異なり、日本は復帰しにくい環境であるからだ。そういった患者さんを受け入れる体制が整っておらず、根本的な考えに、違うものは排除しようという概念がある気がする。この環境があるから、日本は自殺者の多い国とされ、ストレス解消のしにくい社会になってしまっているのだろう。ストレス因子は環境の良さによって大きくも小さくもなり、精神健康は人のおかれた環境によって良くもなるし悪くもなるのだ。その環境を整える事に医療関係の人間はもっと携わっていくべきで、周りと連携しなければいけない。